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隠し剣 孤影抄

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山田洋次監督の時代映画「隠し剣 鬼の爪」の原作短編が収録された文庫。

「鬼の爪」含め、全八編が読めるが、どれも素晴らしい作品である。
映画になった「鬼の爪」はその名の秘剣としては、この文庫の中でもやや地味な
ようで、それ故か山田映画では「邪剣竜尾返し」の秘剣も取り入れられているようだ。

隠し剣シリーズは主人公が折角伝授された秘剣を遣いながらも、
力足らず自らの命を落としてしまうという結末も多い短編集だが、
そのあたりが、決してずば抜けた剣豪像を創り上げない藤沢節の一面だと思う。 
このシリーズは直木賞をとった、藤沢周平の初期作「暗殺の年輪」の正式な延長上にあることは歴然で、全編に漂うちょっと暗めの雰囲気がまたいいと思った。

その中で私の好きなものは、闇夜に使う暗殺剣で上意討ちされた父親の仇を
探しきれなかった息子、そしてその妹、志野が偶然にも迎える皮肉かつやや怖い結末。
それを彼女の視点でサスペンス調に仕上げた(つまり秘剣を遣う者が主人公ではない訳だ)
「暗殺剣 虎の目」が作風ともに大好き。

また立場上、最も抗いがたい相手に秘剣を利用されながらも、それに気づくのが遅く
自らの最後の最後に一矢報いることのできた、悲哀の討手とその姪との悲恋を軸にした
「必死剣 鳥差し」もやるせないが  いい。

そして最後に収録された、隠居してもなお若い頃に端を発した宿命に翻弄される
「宿命剣 鬼走り」もちょっと長編にしても面白そうな内容で、隠し剣士の最後を看取るに
相応しい集大成的な名編だ。

全体に言えることは秘剣小説>悲剣小説=悲恋小説だったということかも。
by coolys1 | 2005-11-24 12:00 | 藤沢周平 | Comments(2)
Commented by KOJI at 2005-11-27 12:50 x
その本ちょっと読んでみたいです。新しいiMac20インチで見てます、写真が奇麗にみえます。
Commented by coolys1 at 2005-11-27 21:23
KOJIさん来年、日本に帰られた時にご用意しておきましょう!

20インチ いいですねぇ・・ボクは会社でやっと19インチです。(しかも純正じゃない)でもG5/W頭脳は調子いいです。


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