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亡くなったマウント

ときのん今年最後の写真展亡れん会に出展する作品を撮ったLENS/CAMERAです。

1990年、東西ドイツ統合後に東側のPRAKTICAブランドは西側の光学機器メーカーである
Schneider-KREUZNACH社に破格の値段で売却されました。

そして作られた統一ドイツのSchneider-Dresden社という新会社で、日本製カメラに最後の
戦いを挑むためなのか? 
はたまた、東ドイツ最後のモダンな一眼レフ機を残す為かは判りませんが、
PRAKTICAに残されたBX20sの在庫部品を使い、DDRの付かない
新生ドイツ製一眼レフとして、極少数量生産販売にまでこぎ着けました。

しかし90年代初頭にAFすら持たない時代遅れのこの一眼レフは
この時を待たなくても、静かにこの世を去らざるを得ない運命でもあったのです。

かつてのカメラ大国ドイツが大戦後、東西に別れ、そして東側ドイツの外貨獲得の
エースとしてペンタコン人民公社等、カメラ産業が、西側と競争しつつ隆盛を迎えるも結局、
東西共にカメラ産業としては、日本のカメラ業界に敗れ去っていったという歴史的事実は
さんざんドイツを手本に発展した我々は決して忘れてはならないと思います。

そんな訳で今回はこの統一と共に消滅したPRAKTICA-Bマウントでしか味わうことの
出来ないレンズ達に晩秋から初冬へ変わる光を通してみました。

・・・・・・・と、偉そうなことを書きつらねていますが、

実は展示点数も少なく、また稚拙な作例のオンパレードになってしまう雰囲気大で
折角、見られた方には申し訳ない展示になりそうです。

それでも色と光の乏しい冬の景色でも奥行きがあって味わい深い模写をする、
滅び去ったJENAのCARL ZEISS の世界を
ほんの少しでも感じて頂ければ、PRAKTICARと私にとって最大の喜びと思っております。



亡くなったマウント_b0058021_17473842.jpg

PRAKTICAR 28/2.8
PENTACON製と表記されているが、M42マウントで存在する29/2.8とは
まったく違うレンズ。 そのしっとりとした模写は日本製レンズでは味わえない
独特な湿っぽさと透明感を持っていて、これは実はPENTACON製でなくCARL ZEISSの
設計ではないかと疑っております。なので自分の主観では数ある広角の銘玉の一つと。
(やや黄色に偏りますので日本のドピーカンの撮影にはちょっと・・・)
こんな素敵で美人の28ミリですが
PRAKTICA末期にはプラ鏡筒にまで身を持ち崩してしまいます。
私は予備用(実はマウント改造したくて)に金属鏡筒タイプを二本持っています。


亡くなったマウント_b0058021_1748390.jpg

PRAKTICAR 50/1.4
特に表記はありませんがこのPRAKTICAR最大の口径を持つ標準レンズは
いわゆる後期型と言われるタイプであります。 前期型同様
ありえない曲率の前玉を持ったコイツは日本製レンズに見慣れた目には異色ですが。
見慣れると抗い難い肢体魅力をもった貴婦人にも思えます。
その魅力的な前玉に思いっきりキズを持っている私の個体は日本でのPRAKTICAの
研究・収集で有名な方からヤフオク経由で激安で購入させて頂きました。 

幸いにこのキズが模写に影響を与えるという認識は一度も感じたことがありませんが、
ニュートラルな色合いと元々のウルトラ柔らかい模写は独特で、さらに絞り羽根の形状からくると思われる癖のあるボケ味も特徴的。
標準レンズという括りの中ではむしろ非標準・異色のレンズといえるでしょう。
(コーティング色も他のPRAKTICARと異なり独特の色合い)


亡くなったマウント_b0058021_174851100.jpg

MACRO-PRAKTICAR 55/2.8
PRAKTICARで最初で最後のマクロレンズです。設計年度は割に新しいにも関わらず
撮影倍率は無理をせず1/2倍、ふつうのレンズでもマクロ並によれるPRAKTICAR
LENSの中ではやや不可思議です。
最後期のCARL ZEISS JENA製という部分では価値あるレンズですが、ピント面でも
芯が柔らかく、溶ろけるようなボケ模写は案外、被写体を選ぶ単能的なレンズなのかも
知れません。

その点を踏まえてもなんとか工夫して、日本製のデジタル一眼レフに装着し、趣味の
ミニカーを撮影出来るようにするのが私の夢のひとつであります。


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PRAKTICAR 135/3.5
このレンズだけは今回の中ではM42マウントで同等のものがあり、Bマウント独自のものでは
ありません。   が、さすがに元祖ゾナーレンズの末弟ですので、模写に全く不満はありません
開放から存分に使えて、さらに意外に寄れるレンズです。(1m)
購入時にレンズ内の電気回路のリード線(可動する基盤回路を結ぶもの)が硬化して
結果半田付け接続部にストレスが掛かり断線してました。

リード線なんか使うなーーーーー!!  といいたいが相手がいない。
by coolys1 | 2006-12-16 08:40 | 写真機邪道 | Comments(5)
Commented by koji at 2006-12-16 23:35 x
そうですPrakticar28/2.8は多分隠れた名玉だと思います、
G-Biogon28mmと大して違わぬ写りをみせます。アタシも3本も
集まってしまいました。KissDNの標準レンズになってます、20cm
位まで寄れるので重宝してます。
全部レンズは黄色に着色してます、これは多分アルミホイルで包んで
陽にかざせば取れると思います。前面をアルミで囲みレンズの裏を
太陽に向け何週もさらすのです(アルミのおかげでレンズは2回も
光を通します)。DSLRではAWBのおかげで黄色の着色は問題あり
ません。
プラクチカールよ永遠なれ!
Commented by koji at 2006-12-16 23:42 x
もう一言、マクロパンカラー55/2.8(M42)も存在するらしいので
気長に探しましょう、マウント改造よりレアかも知れませんけどねぇ。
Commented by coolys1 at 2006-12-17 08:20 x
1mm以上フランジバックの長いボディ用にレンズを改造するのは
困難ですよねー。 マクロパンカラー(M42)と出会う機会がもしあれば
それは人生の重要な決断のひとつとして悩ましい瞬間に身をさらす
ことになるでしょうね 笑

私の二本は微妙に黄変度が違うみたいです。でも黄変治療 教えて頂いた方法でやってみます。
ただ、日本の今年の12月はあまりお天気がよくないのですよ。

Commented by オールドレンズコレクター at 2015-08-29 18:19 x
Pentacon(1990年Meyer)28mm2.8はガラスだけ、日本シグマで生産された記事をどこかで読んだ記憶があります。しかし調べてもこれといった根拠もなく、もし分かれば是非教えてください。
Commented by coolys1 at 2015-08-30 09:02
オールドレンズコレクターさま コメントありがとうございます。 
またこの枯れた記事に新たなる貴重な情報をありがとうございます。 
私の唯一の資料(東ドイツカメラの全貌)によれば、ペンタコン(=メイヤー)がいわゆるオレストン29/2.8の次にBマウント用に造ったような解釈になっていますね。
(7群7枚は変わらない)
ただし、80年代後半から90年頃にはシグマ製のズーム等も出回っているので、少なくとも後半(プラ鏡筒)モデルやM42マウント版(存在したのか?)
などではシグマの光学系を使っていてもまったく不思議はないと思います。
コシナカメラを見学した時や、中野の写真機居酒屋に来るメーカー系の方の四方山話を聞いたりしていると国内でも、正に「なんでもアリ」の世界が展開していて面白いですね。

手持ちのBマウントレンズは、数年前の家計逼迫時のレンズ大粛清の際にも、手放さずまだ持っています。
(つまり他のレンズは売れるので、手放したのだが、Bバヨは当時値段すら付かないコレクションだったのですね 苦笑)
現在ではα7系という神様のようなデジタルボディが世の中に出たので、Bマウントの値段もグイグイと上がってきたようで複雑な気持ちですが、
こうなりゃ私も7ボディを買って 今後も謎多きBマウントを実用に使って行きたいと思っています。
尚、写真に写っているBX20sは、現在勝手に漏電中で、高価な酸化銀電池を入れても一晩でなくなってしまいます。
その他BC1もBX20も怖くて触っていません!


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